今回は以前に販売された車両の紹介でもお書きします。
1967年式912。

俗にナローと呼ばれる中でも初期のモデル。

SWBと呼ばれますが改めて書きますと…、
「SWB」=「Shortwheelbase」
1968年までの車両を総称してSWBと呼びます。

これはポルシェがリヤヘビーな911の操縦性を改善すべくホイールベースをリヤ側でサスペンションアームを50㎜伸ばした事に依ります。
なのでそれまでの年式をSWB。
後のをLWBと表現します。

さて、SWBでも各年式で少しづつ変更が有ります。

有名なのが67年式までの特徴、右停止のワイパー。

これは911でも同じですが降雨の際にドライバーの視界を一刻も早くクリアにするために
翌年の1968年式からは左側停止に変更されます。

この変更により993までのオーナーならご存知、ワイパー停止の瞬間にお釣りが
視界右上に残ります(笑)

この67年までは一般的な助手席側停止なのでその不快さは無いですが…。
その一部の不快さよりも視界の確保に至るごく僅かの時間すら拘った姿勢が空冷時代のポルシェを物語ってるので僕は好きな特徴です。

画像が悪いですがSWBの特徴、トーションバーのホールとホイールアーチ前端が
直ぐ横に迫ってるのも良く分りますね。
ホイールアーチのリップの張り出しもほんの僅か、10㎜程出てるだけです。
1969年からはここがもっと外に膨らむんでこれを本当の
ナローボディと言われる方もいらっしゃいますね。
このカットもSWBの特徴的な画像です。
フードグリル部分の開口部真ん中に縦にリブが通ってます。
ビームの方が正しいのかな?
補強の意味でも有るでしょうからリブと書いておきます。
この位置で一目でSWBと分るので真後ろからでも判別出来ますね。

但し、この特徴も1968年モデル末期には翌年1969年に採用の
開口部にリブの無い仕様が存在します。
その車両にはこの横桟を丸棒で繋いだグリルは使われず、69年からの横桟を縦3本のバーで固定する物が使われてます。
この辺がポルシェの年式=9月更新に原因が有るんでしょうね…。
この辺も面白いです。

皆さん911のテールランプは1989年まで基本的に同じ物と思われてるでしょう。
これがSWBの時代と1969年以降とでは似て非なる物。
全く違うパーツです。

造形も近くで見ると全く違う物が使われてます。
皆さんご存知のランプは金属のケースの上にリムまでカバーするプラスチックレンズが上から載せられてビス留めされてます。

それがSWBの時代には外側のリムの部分までが金属ケースでメッキが施されてます。
その内側にプラスチックレンズが仕込まれてますがこのレンズの造形もまた69年以降とは違い工芸品チックな雰囲気を醸し出します。

画像を見て頂くと分かりますが横方向のカーブと別に縦方向にも
緩やかにラウンドしてます。
この微妙な違いが実物を間近に見ると圧倒的な存在感で
工芸品の様な雰囲気を発して来る訳です。


912なのでエンジンは4気筒。
356ベースの1600ccが載ってます。

良くワーゲンポルシェと表現する方も居ますが間違いなくエンジンまでポルシェです。

ちなみにワーゲンポルシェは本来914を指しますが914も2.0Sからは
ポルシェ独自のエンジンです。



ここもSWBらしい特徴的なディテールです。
1969年からはこのモールもウインドーサッシもアルミ製に代わりますが68年までは
真鍮が使われております。
サッシ後部の跳ね出しの鍔が急角度で軽く外向きにカーブしてます。
しかもこの鍔が別体で造られてます。
どうやら風切り音対策で後から鍔を付けた様です。

以上、ナローでも初期のSWBの時代の特徴に付いて書いてみました。